東海愛知新聞バックナンバー
 3月9日【日】
万足平を考える会
補修や環境整備
先人苦闘の遺産「猪垣」を守る
岡崎市中金町

岡崎市中金町万足平に残る県有形民俗文化財の猪垣(ししがき)を地元の「万足平を考える会」(河合行郎会長、会員30人)が補修し、保全に努めている。8日は18人が参加して男川沿いの竹を伐採、猪垣周辺の枯れ木を集めて焼くなど環境を整備した。

男川を挟んだ県道の対岸は子どもたちの通学路。土手に生えた竹が見通しを遮るため、安全に配慮して切り倒した。きれいにした後、桜の苗木を植えるという。

猪垣は江戸後期の文化2(1805)年と天保3(1832)年に分けて築かれた。作物を荒らすイノシシの被害に苦しんでいた農民が石を一つずつ積んでいった。県の文化財に指定されたのは昭和56(1981)年2月23日。

■延長600メートル

「猪垣の場所はまだ知られていない」と河合さん。市街地からは県道岡崎清岳線を宮崎町方面へ。森林組合事務所の手前、男川に架かる万足下橋を渡る。料理店「大松滝山荘」の先、苔(こけ)むした石垣が東へ約600メートル延びる。

硬く平らに割れる地元産の領家片麻岩が高さ160センチ前後、幅約61-90センチほどに積み重ねてある。上部は山側へ反っている。「あぶり」(猪返し)といい、イノシシやシカが石垣を上り越えられないようにした先人の知恵。猪垣に沿う山側の通路を歩くと、あぶりがよく分かる。しかし、長年の間に木が倒れてきたり雨で土が流れたりして猪垣が崩れてきた。

■3年前に発足

そこで河合さんら15人ほどが1年余の準備を経て平成17年2月27日、考える会を発足させた。猪垣保全と地域づくりを活動目的にし、桜や紅葉の植樹、ささゆりの里や水車の復元、サイクリングロード整備―などを行うことにした。

これまで16回、草刈りや枝打ちなどをし、昨年は猪垣の補修に着手。県教委に届け出たうえで、石材会社の職人から指導を受け1回目は6月16日、2回目は12月15日に行った。石を根石という基礎部分まで取り外し、再び一つ一つ積み上げた。

同会は今後、猪垣の補修を急ぐ。先人たちの苦闘の跡を「多くの市民に見ていただきたい」。河合さんは、枯れ木を運びながら語った。





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