東海愛知新聞バックナンバー

 10月17日【金】

職人技の粋を集め

岡崎 建築の意匠をみこしに

みこしに集めた職人技の粋を見てもらいたい―。岡崎市内の職人3人が約1年前から、熟練した建築技術を駆使して「子どもみこし」を作り続けている。大手住宅メーカーの台頭や取り扱いが容易な素材による住宅の普及により、苦境に立たされている建築業界の職人。そんな中、「建築技術の意匠を後世に残そう」と、試行錯誤を繰り返しながら本業の合間を縫って始めたサイドビジネスだ。(今井亮)

「職人技の神髄を発揮できるものはないか」。そう思い立ったのは、同市赤渋町で建築会社を営む大工歴47年の柴田孝平さん(63)=同市六名1。

住宅と同様、幾重もの工程を必要とするみこし。そこで、職人として引退を考えていた建具師歴60年の松原利一さん(75)=同市堂前町=と、塗り師歴35年の永井武さん(54)=同市矢作町=の職人仲間2人に声をかけ、「みこし製作集団MSN真宮」を結成した。

みこしの造形は寺社仏閣の様式といった宮大工が手掛けた仕事を参考にした。「大変だが面白い」。3人は初めて完成した試作品に手応えをつかんだ。

赤、黒、金を基調色とし、重量は子どもが担げる15キロ前後に計算。1基完成させるのに通算で10日間かかる。ペースを早めても「1カ月に5基が限界」という。

これまでに約15基を作り、市内の祭事関連商品の販売店に卸した。1基50万円でインターネット販売され、全国から注文が舞い込んでいる。

柴田さんの頭の中にある設計図を頼りに、白木のかんな掛け、組み立て、合成樹脂塗料の塗装を経て、仕上げに金具を取り付ける。塗装一つ取っても何重もの重ね塗りを要する工程。経験のない壁に頭を悩ませながら、「格子作りに挑戦したい」「鏡面塗りを目指したい」と、職人ならではの意地を見せる。

既成概念にとらわれないユニークなみこしを目指し、息の合った3人の熱意がぶつかり合うのは「決まって宴席」と笑う。目標は「大人みこしを作ること」と柴田さん。「納得してしまえば成長しないのが職人というもの。まだまだ奥が深い」と話している。

問い合わせは柴田さん(090―3555―5072)へ。