東海愛知新聞バックナンバー

 2月26日【水】

脳腫瘍治療に光明

神経幹細胞維持の仕組み解明

岡崎市明大寺町の自然科学研究機構生理学研究所の池中一裕教授と滋賀医科大学の等誠司教授のグループは25日、脳再生医療に重要な神経幹細胞が維持される仕組みを解明したと発表した。研究成果を応用すれば脳腫瘍の治療技術の改良にもつながると期待感を示している。(竹内雅紀)

■生理研と滋賀医大グループ

神経幹細胞は胎児期の脳で大量に神経細胞を生み出し、細胞分裂を繰り返して増殖するが、成人では動きがゆっくりになる。このゆっくりな細胞分裂(分化)の性質が神経幹細胞の能力維持につながるとされているが、仕組みは解明されていなかった。通常の細胞は1日に1回分化、幹細胞は数週間に1回しか分化しないという。

神経幹細胞生物学の等教授らは、DNAが巻きついたたんぱく質「ヒストン」が遺伝子活性化を促進させる要因となっている酵素「Bre1a(ブレワンエー)」に着目。さまざまな遺伝子の発現を調節する因子のBre1aが神経幹細胞の分化や細胞周期のバランスを取っていると考えた。

実験では、妊娠中のマウスの子宮を取り出し、神経活動が盛んな13.5日目の胎児にBre1a発現を抑制する遺伝子を導入。3日後に観察すると、神経幹細胞でBre1aがほとんど抑制され、多くの神経幹細胞の分化が抑制された。同じように14.5日目の胎児にBre1a発現抑制遺伝子を導入、生後14日目を観察すると、神経幹細胞の細胞周期が延長されていた。

脳腫瘍の原因の半数以上とされるグリオーマ幹細胞は、分化せずにゆっくりと細胞分裂をしている。等教授らは、グリオーマ幹細胞にBre1a発現を高める投薬などを行えば、細胞分裂が早まり、抗がん剤や放射線治療がより効くのではないかと考えている。

研究成果は、米神経科学誌「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」に掲載された。