東海愛知新聞バックナンバー

 12月28日【金】

ありがとう「桑谷山荘」

岡崎 市民の憩いの場 31日で閉館

岡崎市山綱町にある市民休養施設「桑谷山荘」が31日で閉館する。市民の憩いの場として42年間親しまれた施設の利用者やスタッフは名残を惜しんでいる。(竹内雅紀)

■42年の歴史に幕

桑谷山荘は昭和45(1970)年7月21日に市営の国民宿舎としてオープンした。標高350メートル、三河湾国定公園内の扇子山に位置し、122人を収容する宿泊施設。三河湾が一望でき、6、7月にはアジサイ約3000株が楽しめることで有名だ。

今年3月末までの延べ利用客は宿泊約70万人、休憩約80万人の計約151万人。平成18年1月には耐震工事をし、市民休養施設としてリニューアルした。利用客の多くはシニア世代で、市民の利用率は80%以上。リピーターも多い。

ピーク時は展望風呂が完成した昭和57年度(約5万人)。昨年度は、食事や入浴だけの利用を含めると約7万人(同施設調べ)だが、社会情勢の変化やレジャーの多様化により利用客は減少。また、構造上バリアフリー化できない点や施設の老朽化に伴う維持費などが懸念され、昨年の市議会12月定例会で今年いっぱいでの閉館が決まった。

同施設の指定管理者・岡崎パブリックサービス理事長で平成6年から11年間勤務した臼井行雄さん(60)は「三河湾が望める空間が売りだった。感謝の気持ちでいっぱい」と振り返る。平成7年には開業25周年記念行事として「あじさいまつり」を始めた。「昼間のお客さんを得ようと力を入れた。岡崎のアジサイ=桑谷山荘と定着したことはうれしく思う」と話す。

閉館が決まってからの1年間は利用客が増えた。宿泊客は4〜11月で前年同期比24%増、11月だけでみると56%増と驚異的な数字で“閉館特需”が続いている。10月に就任した内田康宏市長(60)も今月25日の定例記者会見で「できれば残したかったがやむを得なかった」と惜しんでいる。

辻村秀和支配人(50)は「最近は懐かしんで宿泊されるお客様が多い。最後まで笑顔を絶やさずに頑張りたい」と充実した1年を振り返り、残りの営業日にも細心の注意を払う。「新しい行事よりも昔から続くものが喜ばれた施設。アジサイは長期間の手入れを怠らなかった先輩方の努力の賜物(たまもの)です。私にとって桑谷山荘はアジサイのような存在」

30日までの宿泊は既に満室。31日の午前11時40分からはグレート家康公「葵」武将隊の演武や餅つきがあり、紅白餅を300人にプレゼントする。入浴無料サービス付きのファイナルランチ(1,000円)は午後1時30分でオーダーストップ。同4時ごろに営業を終了する予定。

問い合わせは、同施設(48―2855)へ。