東海愛知新聞バックナンバー

 11月13日【火】

「現代の名工」岡崎の石工職人・原田さん

灯籠作り続けて50年

さまざまな分野で卓越した技能を持つ人たちをたたえる「現代の名工」に岡崎市上佐々木町の石工職人原田一男さん(66)が選ばれた。県内で選ばれた15人のうちの1人。「職人として誇りに思う」と喜んでいる。(竹内雅紀)

原田さんは中学卒業後、定時制高校に通いながら同じく石工職人だった父・松男さんのもとで4年間見習いとして修業を積んだ。父や年齢の近い腕のいい職人に基礎をたたき込まれた。「当時は休みが少なく、汚れるし、飛散する石の破片でけがをすることもあった。仕事がきつくて辞めたいと思うことが何度もあった」と言う。昭和53(1978)年に先代の松男さんから家業を引き継ぎ、石松石材商会の2代目代表となった。

専門は灯籠(とうろう)。灯籠の重要な部分の「蓮弁」(ハスの花びら)などを作り出す技術が高く評価された。ノミとツチを使って形を整え、丸みや膨らみ、へこみ、曲線など絶妙なバランスを表現するのには繊細な細工技術が必要になる。主に鎌倉時代や南北朝時代の豪快で味わいのある灯籠を参考にして製作に励んでいる。職人としての半世紀を「山あり谷ありだった。自分が作ったものがお客さんに喜ばれて褒められるとうれしい」と振り返る。

「現代の名工」に選ばれたことで、プレッシャーも感じる。「変な物は作れない。体力が続く限りは続けたい」と意気込む。

また、後進の育成のためにと岡崎技術工学院で講師も務める。「技術だけでなく職人としての心構えなども教えている。『先生お願いします』と言われると、がぜんやる気になってしまう。自分の経験が役に立てば」と若手職人たちに期待を寄せている。