東海愛知新聞バックナンバー

 3月18日【水】

32年で買った本3350冊

送金・斉藤さんに最後の感謝
岡崎市恵田小

32年間にわたり岡崎市恵田小学校の図書充実のために毎月1万円を贈り続けた豊田市白山町の斉藤憲雄さん(83)に感謝する“最後の会”が17日、同小学校であった。保護者や学区諸団体の関係者も出席して斉藤さんに謝意を表した。

斉藤さんが恵田小のことを知ったのは昭和52(1977)年6月の新聞記事。当時同小は校庭に植えたウメの木から梅の実を収穫、販売して図書購入の資金づくりをしていた。この記事を読んだ斉藤さんは書店で児童用の図書を買って同小に直接、届けた。

斉藤さんは秋田県横手市の生まれで同小とは縁もゆかりもなかったが、「満足に本も読めなかった自分の幼いころを思い出して子どもたちの役に立ちたいと思った」と語る。

翌月からは1万円が現金書留で手紙とともに届き、以来昨年の11月まで32年間、374カ月、ひと月も休むことなく1万円を送ってきた。本は3,350冊にもなった。

当初は、「いつまで続けられるか分からないので匿名にしたい」という斉藤さんの気持ちをくんで「本のおじさん」からとして児童たちに紹介していたが同57年、寄贈本の合計が1,000冊になったことから学校側の要請で名前を明かし、児童たちと対面。本は「斉藤文庫」として児童たちに親しまれ、年に1度、感謝の会を開いた。

「病気だから、お別れ」

感謝とお別れの会には、同小体育館で全校児童166人と保護者、学区民ら約20人が参加した。

小柳好直校長が、これまでの経過を説明し、小柳校長から感謝状や記念品が、教師から花束が贈られた。

児童からは全員で書いた文集と似顔絵の色紙が贈られ、6年生の中根みなみさんが「あまり読書をしなかったが、斉藤文庫を読むようになってから読書が好きになりました。長い間ありがとうございました」と感謝の言葉を述べ、30年前にできた斉藤文庫のテーマソング「本はともだち」を全校で歌った。

あいさつに立った斉藤さんは「ほんとうは、お別れしたくありませんが、私も妻も病気でこれまでのように本を贈ることができなくなりました。残念です。元気になったらまた来ます」と名残惜しそうに話した。

付き添って来た一人娘の斉藤鏡子さんと体育館を去る斉藤さんに、児童から大きな拍手が送られた。

(小柳好直様のお名前の「柳」は正確には「蛛v(「きへん」+「夘」・「柳」の異体字)ですが、この字はパソコンの種類によっては表示できません。そのため替わりに「柳」の字を使っています。)


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